湿布薬や痛み止めを使用するタイミングについて

執筆者 | 2021/07/23 | , 患者向け

こんにちは二天堂鍼灸院の中野です。今回は痛み止め(消炎鎮痛剤)や湿布の使用について書いていきます。
患者さんに質問すると習慣的に連用している人が多いので、それは一考してくださいという内容です。
痛み止めや湿布の使用はタイミングを誤ると「百害あって一利無し」ということもあります。

薬(湿布薬、痛み止め)の使用について


患者さんからもよく質問を受けるので、痛み止めの使用について私の考えを述べておきます。

発症直後の急性期には、消炎鎮痛剤やステロイドを用いれば、過剰な炎症を防ぎ、痛みを出来るだけ低いレベルに抑えることができます。だから急性期には、炎症と痛みのコントロールを目的に積極的に薬を用いるべきです。

しかし、慢性期へ移行した症状に対しては、湿布薬やステロイドは無効です。無効だけなら無害ですが、むしろ治癒の妨げになるので、慢性期については出来るだけ薬の使用は控えたほうがいいでしょう。

慢性期において湿布薬や痛み止めを連用している人がよくいらっしゃいます。たしかに薬が効いている間は多少痛みが和らぎます。しかし原因治療にはなりません。もちろん痛みで眠れないとか、ここ一番どうしても痛みを止めておきたいとか、頓服(症状が出たときや激しいときなどに必要に応じて薬を使用する用法
の使用は問題ないですが、習慣的に惰性で用いるのは控えるべきです。

なぜなら炎症による痛みは身体の生体反応で、正しくは免疫による治癒反応だからです。ダメージのある組織では、その修復を行うために免疫細胞が集まってきます。この時免疫細胞からは炎症と発痛を起こすプロスタグランジン等のメディエーターが放出され血管が拡張し血流が増加します。そうして炎症と血流の増加によって組織の修復が行われ、新陳代謝が促進します。

消炎鎮痛剤は発痛物質を阻害して痛みを止めます。したがって免疫反応を止めて血流の促進を阻害します。薬が効いている間は痛みは止まりますが、効果が切れると再発します。しかも治癒反応を止めてしまうので、それを繰り返している内は決して快方には向かいません。
湿布薬くらいなら大丈夫というのは間違いです。飲み薬も湿布薬も消炎鎮痛剤の成分は「ロキソニン」「ボルタレン」「イブプロフェン」など同じです。胃から吸収するか、皮膚から吸収するかの違いだけで作用は変わりません。またこれらの薬は自律神経の交感神経を緊張させる作用もあり、長期連用すると消化管を荒らしたり(だから胃薬とセットで処方されます。)血圧が上がったり、肥満傾向の人では糖代謝が上昇し糖尿病のリスクが高まるなどの副作用があります。


湿布薬といえば、貼った後が発赤し、かぶれているのをよく見ます。一方、痛み止めは胃を荒らすので胃薬と一緒に処方されますが、実際胃が荒れている様子は視覚的には見えません。でも皮膚のかぶれと一緒です。同じような現象が薬剤を吸収する部位で起こるはずです。だから湿布薬でかぶれる人は飲み薬の方も要注意です。それだけ胃に負担が出やすい傾向にあると思います。


余談ですが、私は顔面の脂漏性皮膚炎でたいへん辛い経験をしました。脂漏性皮膚炎とは、分かりやすくいうと大人のニキビのようなものです。もともとオイリーな肌質で成長期の頃からニキビには悩まされました。それが可愛がっていた猫が死んで、ペットロスですね、そのストレスをきっかけに頬っぺたの周辺が赤く爛れてガサガサになってしまいました。もともと素因があって多大なストレスにより免疫のスイッチが入り、暴走して皮膚炎を起こしたのだと思います。
多少火照りはあるものの痛くも痒くも無いんです。他人から見れば、先生少し顔が紅いわね~程度なのですが、本人はもう大変です。患者さんとまともに目も合わせられない、顔を見られるのが恥ずかしいというか苦痛、とにかく憂鬱でした。あ~~病気には、それぞれいろんな辛さがあるんだと骨身に沁みました。どのような患者の訴えも生半可に扱ってはいけないし、それぞれの苦しみがあるんだと遅まきながら反省しました。
皮膚科では抗生剤と軟膏が処方されました。最盛期は抗生剤が効果がありました。軟膏ではステロイドが効果覿面ですが、どちらもやめると再発します。結局、治りきらず、寛解しては再発の繰り返しでした。スキンケアもいろいろ試しましたが、これも決め手に欠け、辿り着いたのが、穏やかに作用する天然成分由来のアゼライン酸の軟膏薬でした。
皮膚の病気だけに視覚的に薬の効果とか経過がよくわかります。結果、やはり生体反応を止めてしまう薬はダメと思いました。無理から川の流れに堰を作って止めてしまうようなもので、薬をやめた途端にドバーッと再発します。だから減薬して少しづつ軟着陸させないとダメなんですね。今回私が使用した薬は作用が穏やかで生体反応を少し抑える程度のものです。副作用もほとんどありません。ソフトランディングさせて着陸という感じです。ここまで来るのに2年間かかりました。

まとめ

もちろん全てはケースバイケースですが、安易に薬に依存して寛解と再発を繰り返している患者さんをたくさん見てきました。現代医学は薬の治療がメインです。薬の使用はたしかに便利ですが、決して身体に良いことばかりではありません。むしろ多くは、その反対です。キレがいい分、副作用というお釣りついてきます。

経済優先の社会では、便利さが優先されます。しかし、便利になると同時に失っているものが必ずあると私は思っています。「時間に縛られ、便利さにほだされ、思考停止のがんじがらめ。」現代人のライフスタイルってそんな気がしてなりません。

鍼灸治療は生体の反応を操作したり、止めたりしない治療です。その逆です。身体の持っているポテンシャルを引き出します。いわゆる自然治癒力(自己修復作用)と言われるものです。そして、生体機能を賦活し、新陳代謝を促進します。それにより治癒のプロセスを加速します。

この記事を書いた人

中野保
中野保

二天堂鍼灸院院長 / ほのしん講座代表

行岡鍼灸専門学校卒業後に北京堂鍼灸・浅野周先生に師事。2001年に独立し二天堂鍼灸院を開院。2007年に炎の鍼灸師・養成講座(現在のほのしん講座)を開校し、未来の鍼灸師の育成にも力を入れています。2018〜19年に 『医道の日本』誌に治療法連載。