大腰筋の刺鍼法

執筆者 | 2021/07/02 | 大腰筋刺鍼, 鍼灸師向け

こんにちは。二天堂鍼灸院の中野です。
こちらの記事は、鍼灸師向けの専門的内容ですが、該当する症状で鍼灸治療をご検討の方にも一読をおすすめします。
また主催する「ほのしん講座」の受講生や当方の術式に興味のある先生は参考にしてください。

私は北京堂鍼灸の浅野周先生に弟子入りし、鍼の治療法を学びました。

浅野先生は現代中国の鍼灸専門書を収集し、その中から自身の治療マニュアルとして採用出来る書を、多数翻訳出版されています。そして、2016年には先生の治療理論の集大成として『鍼灸院治療マニュアル』を上梓されました。北京堂鍼灸では、中国の鍼灸理論と現代医学の解剖生理学をベースに、主に筋肉、神経をターゲットに施術し、再現性の高い治療を行っています。

ここでは、師の元から独立して私なりに研鑽を積み、考察を重ねた内容をまとめます。トンデモ理論を展開するつもりはありません。ちゃんと考えれば誰でも理解できる当たり前の事を書いていこうと思っています。そして、この治療法が少しでも多くの先生のお役に立てればと願っています。

治療の実際は、長鍼を用いた深鍼のテクニックです。深層の筋肉や神経根刺激、背部(胸郭部)においても最深部まで安全に刺入できる方法を確立しています。先ずは、その代表的なテクニックの大腰筋刺鍼をご紹介したいと思います。大腰筋刺鍼は深層筋(インナーマッスル)アプローチの代表的なテクニックです。3寸鍼を用いて刺鍼します。

私の臨床では、肩こりや腰痛にかかわらず、うつ伏せの姿勢で頚、肩、背中、腰、つまり体幹の背部を中心に診ていきます。それが基本治療です。この伏臥位の基本治療においてもっともよく用いる鍼法が夾脊刺鍼と大腰筋刺鍼です。もちろん、肩こりや腰痛に対する処方でもありますが、実際は、いろいろな病気や症状に対応できる非常に汎用性の高い鍼法です。体幹の背部は東洋医学的には、臓腑の背兪穴が配当され重要な治療部位となっています。私は身体構造的にこの場所の意味を考察しながらご説明できればと考えています。

大腰筋性腰痛の鑑別方法

まずは大腰筋刺鍼が必要な腰痛の鑑別についてご説明します。

筋筋膜性の腰痛を想定した場合、その腰痛がアウター型か、インナー型かを鑑別する必要があります。この場合のアウターは固有背筋で、インナーは大腰筋です。(アウター、インナーは固定的な分類ではありません。比較する対象により変わることに注意。)


そこでまずは①固有背筋(多裂筋、脊柱起立筋)が主犯の腰痛か、②大腰筋が主犯の腰痛かを鑑別する必要があります。あるいは①と②のMIX型も考慮します。

①固有背筋型腰痛

固有背筋の腰痛は前屈動作に障害がでます。腰部の固有背筋では多裂筋が最も発達しています。その次はウエストの高さで腰部の外縁に触知できる腸肋筋です。この2つの筋が主要なターゲットになります。
前屈みや中腰がダメなのが特徴です。私は「朝の洗顔の時はいかがですか?」といつも質問しています。固有背筋の主な作用は脊椎の伸展(後屈)ですが、前屈動作は固有背筋のエキセントリック(伸張性収縮)運動だからです。筋肉にとって最も高いレベルの負荷は伸張性収縮です。この時筋肉は引き伸ばされながら力を発揮するので、顕微鏡的レベルで筋繊維が切れて受傷し筋肉痛が発生します。肉離れが分かりやすい例です。それに比べて、いわゆる筋肉の作用方向(短縮性収縮/コンセントリック)では、筋肉のダメージはほとんど生じません。筋肉の受傷のタイミングを考える場合には、これは非常に重要な視点となるので忘れないでください。

次に固有背筋はアウターの筋肉なので、圧痛点が明瞭です。患者自身の訴えもここが痛いと局在性がはっきりしているのが特徴です。どちらかというと腰でもウエスト当たりの高い位置での訴えが多いという印象です。memo
想像してみてください。慣れない農作業を強いられクワで土を耕すことになりました。あなたは前屈みで作業をしますが、じきに腰が疲れてきて時折腰を伸ばしてこぶしでトントン。これがアウターの筋肉疲労です。前屈みは固有背筋の伸長性収縮(エキセントリック)です。この時こぶしで叩く場所って、骨盤と胸郭の間のウエストのあたりじゃありませんか。ここがアウター型腰痛の訴える場所です。

②大腰筋型腰痛


大腰筋の腰痛は立ち座りの動作に傷害がでます。大腰筋は脚部の筋肉だからです。立ったり座ったりする時に痛みや違和感を感じる。あるいは座位から立位になる時に腰が伸びにくいというのも特徴的です。

大腰筋は深層のインナーマッスルなので、痛みの局在が不明瞭です。患者の訴え方はおおよそこの辺りという表現です。だから押圧した時にも、大腰筋の場合ははっきりした圧痛はでません。 腰でも下部の骨盤(仙骨)周辺の奥が重い、怠いという訴えが多いという印象です。

また大腰筋は腰神経叢支配なので、大腰筋が原因の場合は下肢症状を伴う腰痛になる場合もあります。この点に留意してください。

以上を念頭においていただければ、①固有背筋型の腰痛なのか、②大腰筋型の腰痛なのか、はおおよそ鑑別できると思います。

最後に①と②の混合型腰痛についてお話しします。慢性腰痛、あるいは再発性腰痛など陳旧性の罹患期間の長い腰痛では、インナーもアウターも両方悪くなっているケースがほとんどです。これは脊髄神経前枝(腰神経叢)支配の大腰筋、脊髄神経後枝支配の固有背筋、これらの前枝も後枝も同じ神経根から分枝した神経線維なのでどちらかの神経が興奮、緊張状態にあれば一方も同調します。したがって、病期が長いと恒常的な神経の興奮が腰全体に及ぶので、インナーもアウターも障害されるのです。

大腰筋についての考察


大腰筋とは、大きな腰の筋肉と書きますが、それでは腰の筋肉なのでしょうか?これは半分は正解で半分は不正解です。解剖学の本のページを繰れば分かります。腰の筋肉なら体幹部のカテゴリーに分類されますが、体幹部のところで一所懸命に大腰筋を探しても一向に見当たりません。では何処に分類されているのでしょうか?これは大腰筋の起始、停止を見れば自明の理です。 もうお分かりですね。大腰筋は下肢のカテゴリーに分類されます。

大腰筋の起始は浅頭が第12胸椎~第4腰椎の椎体側面および椎間円盤側面、深頭が全腰椎の肋骨突起です。停止は大腿骨の小転子です。股関節を屈曲する時に働く最大の筋です。

ちなみに私たちが普段よく食べているお肉の部位で言えば大腰筋は何処に当たるかご存知ですか? 牛肉や豚肉ならヒレ肉です。豚肉の売り場でとんかつ用のお肉を見ていると、ヒレ肉のかたまりが売っています。これなんかは見たまんま大腰筋です。ついでに鶏肉では?鳥のヒレ肉っていうのはあまり聞かないですね。でもヒレ肉っていうのは脂身の少ないお肉です。鶏肉で脂身の少ないお肉といえば、そうササミです。私はコストコが好きで、よく買 い物に行くのですが、ロティサリーチキンという鳥の丸焼きをよく買います。安くてとっても美味しいんです。で当然丸焼きだから解体するのですが、これがちょっとした解剖学のお勉強にもなります。初めてこの丸焼きを解体しながらササミにたどり着いた時は少し感動しました。なるほどこれは大腰筋ではないかってね。

大分脱線しましたね。四つ足動物や鳥類にはあまり腰という概念は無いのではないでしょうか?

それでは、大腰筋の本当の役割ってなんでしょう?四つ足動物の歩行では、大腰筋はそれほど大きな役割を担っていないはずです。推進力を得るには後方への蹴り出しが最も重要で、大殿筋やハムが発達しています。後方に蹴り出された脚は、重力落下の慣性でスタートポジションに戻るので、この時の屈曲動作における大腰筋の活動はそれほど大きくないと考えられます。

じゃあ何なんだろう?この筋肉って?その答えは、大腰筋が体幹(腰椎)から延長している事にあるのではないでしょうか。前脚(前肢)には、そんな筋肉ありません。例えば、びっくりした馬が、ヒヒーンって立ち上がる時、熊が威嚇でオリャーって立ち上がる時、あの象でさえサーカスでは立ち上がって芸をするじゃないですか!つまり立位を実現するために体幹(脊柱)を抗重力方向に立ち上げていくのが大腰筋の役割じゃないでしょうか。一本マストの脊柱をぐっと立ち上げていく張り綱が大腰筋の役割なのです。腰椎と後脚をつなぐこの筋肉がなければ体幹はどう考えても立ち上がりません。

当然、この時の大腰筋の活動とは、伸長性収縮(エキセントリック)です。張り綱だからぐっと引き延ばされながら緊張しています。筋肉にとっては最も過酷な状態です。

それで我々人間はというと、四足歩行から二足歩行へトランスフォーム!ドリャーっと立ち上がって、それでそのまま活動するようになってしまったんです。いわゆる直立二足歩行ですね。さらに直立二足歩行では、抗重量方向に下肢を持ち上げないと前に進めません。つまり直立二足歩行では大腰筋は積極的に脚の筋肉として、はたらかざるおえない環境にあるわけです。そう考えると、立位や歩行という日常的姿勢や動作が大腰筋の疲労につながると推測できます。

我々の大腰筋は腰の姿勢筋であると同時に、脚のムーブメントの筋肉としても重要な役割を担っています。腰部では、大腰筋が腰椎の前弯の形成、また骨盤部においては腸骨筋と合して腸腰筋となり骨盤の前傾に大きく寄与します。骨盤と腰椎は脊柱の土台であり基部です。ここでの骨盤の傾斜、腰椎の弯曲が適正でなければ、それに続く胸椎、頚椎のカーブの連続性も適正でなくなるでしょう。

スポーツをよくする運動能力の高い人の腰では、大腰筋が発達しているので、腰椎の前弯による腰部の縦溝がくっきりと美しく現れています。逆に運動不足の身体をあまり使ってない人の腰では、大腰筋が衰えて腰椎のカーブが消失しストレートになっている場合が多く散見されます。

理解していただけましたか、大腰筋は脚の筋肉であると同時に腰の筋肉でもあることを。脚と腰の筋肉、足腰です。年老いると「足腰が弱ってきたな~」と言うのが常套句ですね。大腰筋が弱体化してしまった高齢者は、足が上がらずカーペットの縁で躓いたりします。この足腰って実は大腰筋のことでは? これって腎虚の症状ですね。腰は腎。そして腎経の経絡の走行を思い出してください。特にお腹のところでは、体の中心部の深い所を走行しています。まさに大腰筋とぴったり一致します。腎は二便を司るとも言います。大小の排泄のことですね。大腰筋は腰神経叢支配で自律神経系では骨盤内臓器に分布する自律神経と連絡があります。したがって大腰筋刺鍼は腰痛の治療だけでなく、便秘や下痢、骨盤内臓器の症状に対しても有効に使えるのです。また足腰の弱ってきた高齢者に大腰筋刺鍼を行うと、足の上がりがすごく良くなったと喜ばれます。つまり東洋医学的には補腎の作用も期待できるのが大腰筋刺鍼です。

大腰筋症候群


腕が怠い、手が痺れる、足が重い、足がよくつる、などの手足の症状、あるいは、上肢の神経痛、下肢の神経痛などは、鍼灸院の来院患者がよく訴える愁訴です。上肢ならば肩こりからくる頸肩腕症候群、下肢ならば腰由来の坐骨神経痛などが多くをしめますが、実際の原因はいろいろです。

まずは上肢の問題なら頚部の腕神経叢周囲でなんらかの障害が、下肢の問題ならば腰部の腰神経叢、仙骨神経叢周囲でなんらかの問題が生じていると考えるのが妥当です。骨に由来する問題ならば椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症、あるいは骨棘の形成等、これらはレントゲン撮影、MRIなどの画像診断で検査できます。そうした骨の異常が認められない場合、頚椎や腰椎周囲の軟部組織の問題と考えられます。軟部組織が原因の場合、最もイメージしやすいのが神経の走行上での筋肉による機械的圧迫や牽引です。

上肢のケースでは、前斜角筋と中斜角筋の斜角筋隙から腕神経叢が出ますが、斜角筋が硬化し神経を圧迫した場合、上肢体に症状が出ます。これを①斜角筋症候群と言います。その他、鎖骨と第1肋骨の間の②肋鎖症候群、小胸筋と肩甲烏口突起停止部の③小胸筋症候群(過外転症候群)と、これらを総称して胸郭出口症候群と言います。

それでは下肢のケースでは、斜角筋にあたる筋肉は何でしょう?これは大腰筋です。腰神経叢は大腰筋の中やその近傍を通過します。大腰筋が硬化し、神経に何らかの機械的刺激を加えるとやはり下肢体に症状が出ます。これを私は大腰筋症候群と呼んでいます。斜角筋も大腰筋もそれぞれ頚椎と腰椎の側面に起始し前下方向に走行する筋肉で、それぞれ腕神経叢支配と腰神経叢支配です。また、大坐骨孔で梨状筋の圧迫による梨状筋症候群は、上肢と比較するなら小胸筋による圧迫の小胸筋症候群とイメージが重なります。これも胸郭出口症候群になぞらえて、骨盤出口症候群と呼んでもいいでしょう。さらに頸肩腕症候も同様に腰殿脚症候という理解でまとめておけば、上肢体と下肢体の診立てが同じ地平に並んでシンプルで分かりやすいと思います。

解剖学のおすすめ勉強法

さて、それでは大腰筋の刺鍼法について説明します。

できるだけイメージが湧きやすいように書いていきますが、文章なのでどうしても限界があります。機会があれば大腰筋刺鍼を実際に見て、受けて、そして追試してください。実技の習得は「見る」「受ける」「やる」この3セットが基本です。

深刺の鍼はリスクを伴います。浅く刺す鍼ならば、体表のツボの位置を正確にとればいいのですが、深鍼には位置の上に、深度がプラスされます。つまりX軸とY軸で構成される二次元の鍼から、X軸、Y軸、Z軸の三次元の鍼への意識転換が必要です。
深刺の鍼のターゲットは、筋肉と神経ですが、腹腔の内臓、胸腔の肺、頚部の血管や神経への誤刺入が主なリスクとなります。対策は解剖学の習熟度を高める事です。最終的には頭の中でMRIで撮影した断面画像のような解析ができるように頑張ってください。

勉強方法ですが、まず数冊の解剖学書と骨模型を準備してください。私のおすすめは『プロが教える筋肉のしくみ・はたらきパーフェクト事典』と『プロメテウス解剖学アトラス解剖学総論/運動器系』です。前者はコストパフォーマンスが非常に高い良書です。私の勉強会でもサブテキストとして購入をすすめています。後者は医学的専門書です。非常に美しい解剖図が特徴です。見ているだけでもインスピレーションが湧いてきます。もちろん専門的解説も充実しています。骨模型については、お金に余裕のある人は3B社のものを買っておけば間違いありません。しかし、安くあげたい人は探せば1万円くらいからでも購入できます。

準備ができたら、解剖学書を確認しながら、全身の筋肉の起始(赤色)停止(青色)を骨模型にペインティングしましょう。なので骨模型は何も塗装されていないプレーンのものを購入すること。複数の本を参考にするのは、それぞれ微妙に解剖図の描かれ方や見解の違いが存在するからです。この学習の目的は、二次元を三次元にトレースする事です。時間のかかる作業ですが大変いい勉強方法です。最近の書籍の解剖図は立体的に描かれ大変よくできていますが、とは言え二次元です。これを立体の骨模型へトレースする中で、よりリアルな筋肉の形、走行が理解できます。また他にもその作業を通して、臨床でのインスピレーションや新発見があると思います。


もうひとつ解剖学の優秀な教材を紹介しておきます。『ヒューマン・アナトミー・アトラス』というアプリケーションです。もうすでに使っている人もたくさんいるでしょう。逆に知らない人はちょっと時代遅れです。情報弱者ですよ〜。今すぐチェックしてくださいね!
このアプリでは三次元モデルの人体をあらゆる角度から鑑賞できるように作られています。もちろん、筋肉、骨格、内臓、神経、血管、リンパなど、全ての臓器や器官が納められ、それらを任意に取り外したり、付け加えたりして自分の調べたいモデルを作ることもできます。

でき過ぎ君でこれだけあればいいんじゃない?って意見もありそうですが私は反対です。やはり、書籍やアプリそれぞれの視点、切り口があるのでいろいろ目を通すべきです。骨模型についてはリアルな現物としての価値は不動です。学習以外にも鍼の角度や深さの検証に使えます。また、患者への説明にもたいへん有効なツールです。

大腰筋刺鍼

大腰筋刺鍼はL4とL5の棘突起間(ヤコビーライン)の高さから刺鍼します。ヤコビー線は、左右の腸骨陵を結んだラインで概ねL4-L5の棘突起間に一致します。L4-L5間が確定できれば、そこにシールでもペンでもいいのでマーキングしてください。このポイントが正確に取れないと全てズレてしまうので慎重に取ってください。でもこれが案外難しいんです。私の勉強会でも最初からちゃんと取れている人の方が珍しいです。大体下にズレています。なぜか?ヒップラインつまり大殿筋の隆起を基準に、その消失点で取っているのです。実際の腸骨陵はまだその上にあって、腸骨陵の辺縁部は中殿筋の起始になっています。もう一度、解剖学書で確認してください。
腸骨陵はスリムな体型の人なら触診しやすいのですが、太めの人では分かりづらいです。その時は、上前腸骨棘(いわゆる腰ボネ)から追いかけると、見当がつけやすいです。繰り返しいろいろな体型の人で練習してください。

それではマーキングしたポイントから4〜5センチ外側に鍼を刺入します。おおよそ背部兪穴のライン上です。マーキングは左右対象に同じ距離で鍼を刺入するための目視のポイントになります。慣れれば必要ないでが、初歩の段階では必ずマークしてください。無しでやると左右の距離が不均等になります。

長針は操作が難しいのでできれば、右に刺鍼する時は右側から、左に刺鍼する時は左側から、治療側へまわって手元で刺鍼してください。ただし、施術台が壁に付けて置いてあるなど、環境面で同側からしかできないというのであれば仕方ないです。
使用する鍼は3寸5番です。3寸鍼は5番と8番が入手しやすいです。現在、レギュラー製品として作ってるメーカーは、ファロスとタフリーとセイリンです。
8番の方がコシがあるので使いやすいですが、最初は5番で練習してください。しっかり深度の把握ができて操作に慣れるまでは太い鍼を使うのは危険です。

刺入すると腰椎の横突起(肋骨突起)に当たる場所があります。まずは骨に当ててみてください。ここまでのエリアが固有背筋(脊柱起立筋、多裂筋)です。腰椎の横突起の向こうが大腰筋のエリアです。横突起に当たった鍼はそのままで(この鍼が安全刺入深度の目安になります。)、その鍼の上下どちらかにポイントを1センチずらして刺入します。入りましたか?もしまだ当たるようならポイントを上下入れ替えてください。横突起を回避できたら、骨で留まっている鍼の深度より2センチ程度が安全深度です。それ以上深く入れると大腰筋を貫通して腹腔内へ鍼が侵入してしまう可能性があります。
それがクリアできれば①L4-L5間の上下、②L3-L4間と③L5-S間、あわせて合計3本鍼を刺入しますが、今回はここまでとします。まずは!①L4-L5、この一本をしっかりマスターしてください。

ここでは私が勉強会で指導している内容とは若干異なります。このブログだけを読んで初トライする人を想定して書いています。
最後に、大腰筋の得気感について書いておきます。刺入部位だけの通常の得気もありますが、時に下肢や鼠径部あたりに刺激が放散したり、重圧感が出たりします。下肢への放散は大腰筋自体が腰神経叢支配なのでその延長で下肢へ延びる神経に刺激が入った場合に生じます。大腿神経(大腿四頭筋)や閉鎖神経(内転筋)の領域に出る確率が高いです。時には坐骨神経領域まで響くこともあります。鼠径部については、腸腰筋(大腰筋+腸骨筋)の走行に沿って得気が生じていると考えられます。このような大腰筋独特の得気感が刺入時に出てきたら、あなたも大腰筋プレーヤーの仲間入りです。

この記事を書いた人

中野保
中野保

二天堂鍼灸院院長 / ほのしん講座代表

行岡鍼灸専門学校卒業後に北京堂鍼灸・浅野周先生に師事。2001年に独立し二天堂鍼灸院を開院。2007年に炎の鍼灸師・養成講座(現在のほのしん講座)を開校し、後進の育成にも力を入れています。2018〜19年に 『医道の日本』誌に治療法連載。2020年 臨床総合実習(必修単位)の認定施設として学生の指導を開始。2021年 開業20周年を迎え、神戸市・芦屋市での地域一番院を目指し日々臨床に取り組んでいます。
神戸市の鍼灸院・二天堂鍼灸院
鍼灸師養成講座・ほんしん講座

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