こんにちは二天堂鍼灸院の中野です。今回は鍼灸師という仕事の周辺事情について書いてみたいと思います。私自身、この資格を人に勧めるか?と問われたら。答えは、積極的には勧めませんが、やりたいと言うなら応援します。やめろとは言いません。実際、私はこの資格でご飯を食べているし、天職だと思ってやっています。私の中の満足度では、やりがい、居心地ほぼ100点なのですが、業界的には厳しい現実があるのも確かです。
脱サラ転職した私の場合
私は脱サラして、2001年、35才の時に自分の治療院を開業しました。当時たまたま鍼治療で腰痛が治り興味を持ったのがきっかけで、それまでの人生で僕が鍼灸師になりそうなファクターなんてゼロでした。それでも鍼灸師になろうと舵を切った一番の理由は、サラリーマンが嫌で続きそうにもなかったからです。資格でも取って、手に職をつけた方が、よくあるパターンで、極論何でもよかったのです。それが今は天職だと思ってこの仕事に情熱を注いでいるのだから、よっぽどこの仕事に向いていたのでしょうか。適性なんて、自分ではよくわからないですからね。
さて実際は、鍼灸師の資格を取得するには最低でも3年間、専門学校に行かなければならないし(4年制の大学もあります。)、ざっと400万程度のお金もかかります。国家資格とは言え、そこまで時間とお金を掛けて、じゃあ資格を取ったら後は順風満帆かというと、ほとんどの人は食べていけない現実があります。今ほど状況が悪くなかった僕の学生時代でも、学校ではこの資格でちゃんとご飯を食べていけるのは5人に一人だと言われた記憶があります。もっとも最近では、難関資格の弁護士や会計士でさえ厳しいという話を耳にします。だから鍼灸師だけが特別厳しいと言うことでもないのかもしれませんが。
鍼灸師とその周辺資格について
鍼灸師という資格について少しご説明しておきます。
鍼灸師は国家資格です。正確には、はり師ときゅう師の二つの資格の総称になります。正直言って、二つに分ける必要性があるのかよく分かりません。学校では一応、鍼実技と灸実技の二つのカリキュラムはありましたが、後は全て共通だったように記憶しています。国家試験も共通だったように思いますが、稀にきゅう師は合格したけど、はり師は落ちたなんて話があって、これは笑い話にもなりません。
鍼灸師の治療の実際は、鍼治療を主体に、灸は補助的に使うというところが多いと思います。もちろん灸治療をメインにしている治療院もありますが、決して多くはありません。それでもお寺や家伝の灸として灸一筋なんて老舗も中にはあります。また鍼灸治療には、様々な考え方、やり方、流派があり、各治療院によってばらばらです。実際、学校で習得できるのは、基本的な技術だけであって、それだけでは臨床は難しいです。勤務してからの経験。勉強会やセミナー等に参加し勉強する。良い師匠を見つけて弟子入りする(最近は少ないですが)。などの努力は必要です。まあなんでもそうだけどね。
鍼灸師の周辺資格には、あん摩マッサージ指圧師(以下、あマ指師)と柔道整復師(以下、柔整師)があります。
あマ指師については、あマ指師のみが取得できるコースもありますが、鍼灸とカリキュラムがほとんど同じなので、鍼灸師とあマ指師が同時に取得できる学校で取るのが一般的です。しかも、授業料もほとんど変わりません。ではそれにしようという話ですが、あマ指師が取得できる学校は少ないのが現状です。その事情については、後でご説明しますね。
あん摩マッサージ指圧師は国家資格ですが、ある意味有名無実な資格です。鍼灸師や柔整師は医師以外を除いては行えない業務独占資格です。しかし、あマ指師については、リラクゼーション業という名のもとに整体、カイロ、オステなど、無資格者でも行える参入障壁のない業務独占とは言い難い資格です。
ちなみに有資格者と無資格者の施術所の見分け方ですが、あん摩マッサージ指圧師は名称独占資格でもあるので、無資格者の施術所では「あん摩」「マッサージ」「指圧」といった看板はあげれません。そこで、「整体」「カイロプラクティック」「オステオパシー」「もみどころ」「ほぐしや」などの看板で営業しています。もちろん、こうした業態の中にも上手な先生はいっぱいいらっしゃいます。ただし、法的に定められた養成施設や養成期間、カリキュラム等がないために技術力や医学知識の習熟度にばらつきがあります。大げさな話、誰でも明日から整体師ですって名乗ってもいい訳です。
それではあマ指師が価値のない資格かというと、意外にも一番潰しのきく資格だったりもします。どういうことかと言うと健康保険が適応できます。もちろん鍼灸治療も健康保険が適応できますが限られた疾患(神経痛・リウマチ・五十肩・頚腕症候群・腰痛症・頚椎捻挫後遺症)だけです。これに対してマッサージは疾患名にかかわらずリハビリとしての適用が可能なんです。そこであマ指師については一番成功しやすい業態は、健康保険を使った往診のマッサージです。業界用語では「往療マッサージ」といいます。これなら立ち上げのの資金はほとんどかかりません。そうは言っても、往診先を開拓して(老人ホーム等に営業をかけるのです。)軌道に乗せるまではそれ相応の努力が必要なのはいうまでもありません。また、健康保険を適応するには医師の同意書が必要であったり、基本的に訪問先は、通院が不可能な寝たきりの患者さんが対象だったり、いろいろ条件があります。しかし実際、あマ指師の資格で成功しているほとんどの人が、このパターンです。
柔整師については、あはき師(あんま・鍼・灸)とはカリキュラムが大分違うので一緒には取れません。いずれの資格も国家資格で最低でも3年の修学期間を経て国家試験にのぞみます。「鍼灸接骨院」の看板をご覧になったことがあると思いますが、柔整師と鍼灸師のダブルライセンスを持つ先生もこの業界には少なくありません。つまりのべ6年間学校に通う必要がありますが、それぞれを昼間部と夜間部に振り分けて、掛け持ちでのダブルスクールは可能です。実際はハードなので3年まるまる掛け持ちでという話はあまり聞きませんが、2年生、3年生の時点でダブルスクールにしたという話は聞いたことがあります。また両方の資格の取得を考えてる人は、両方のコースがある学校に行く方がベターだと思います。おそらく入学金や授業料などの優遇措置があります。
柔整師は医師の同意が無くても健康保険が扱える強みがあります。だからかつては一番美味しい資格だったかもしれません。しかし、もっとも過当競争が激しく、今やコンビニの数をを上回るようです。(ちなみに僕の治療院の半径100メートル以内には10軒以上の接骨院があります!なんで?って考えたんですが、多分不動産屋が連れてくるんじゃないでしょうか?ここは接骨院が集中しているんで相乗効果が高いとか?それだけ需要があるとか?で結局どこもそんなに流行っている様子はないんだけどね〜)また高齢化に伴う医療保険の財政難や不正請求の問題などがあり健康保険の取り扱いも年々厳しくなり、いまは保険治療から脱却して自費治療で患者を取れるように努力している先生も少なくありません。
ちなみに柔整師は骨折、脱臼、捻挫、打撲、挫傷などの外傷を扱える施術資格です。昔は「ほねつぎ」なんて言いましたね。資格名にあるように柔道におけるケガを手当てする伝統技法としての歴史があります。だから、学校では柔道が必須科目なんですよ。
しかし、現在では上記のような外傷は整形外科に行くのがほとんどです。かつては、整形外科が少なかったので、そこの受け皿になっていたんです。いまでは、肩こり、腰痛などが多くをしめ、肩こり⇒頸椎捻挫、腰痛⇒腰椎捻挫などとして保険請求し、マッサージをしている接骨院も少なくありません。一般のイメージは保険の利くマッサージ屋さんですが、柔整師の本来の業務ではありません。保険医療の財政問題、供給過剰、不正請求の乱行などがあり健康保険での取り扱いが年々厳しさを増しています。
過当競争のきびしい現実
業界の現状は免許取得者が増え過ぎて、需要と供給のバランスが完全に崩れています。
私が学校に通っている頃は、あはき師の学校も柔整の学校も全国に指折り数えるくらしかなく、養成学校に入るのが難しかったんです。それこそ鍼灸学校、柔整学校に入るための予備校があったくらいです。狭き門なので入学志願者はコネを利用して寄付金を積んで入るというのが常態化していました。それはそれで弊害ですがね。しかし、いまみたいに学校が乱立していなければこの資格ももっと美味しかったかもしれません。
なぜそこまで学校が少なかったかというと、昔はあん摩・マッサージ・指圧師は視覚障害の人が生業にする割合が多かったので、その仕事を保護するということで晴眼者の流入を制限していたのです。そして、鍼灸師・柔整師についてもなぜか右に倣えという形で規制が守られてきました。
それが1998年福岡で柔整学校新設に向け裁判沙汰になり、結局鍼灸師・柔整師の養成学校については自主規制が撤廃されました。(唯一あマ指師の資格だけが聖域として法的に保護されているためにあマ指師の養成施設だけが増えていないのです。しかし、これも現在裁判で係争中のようで、この先はどうなるか分かりません。)その後、雨のあとの筍のように次から次へと学校が乱立し、鍼灸師養成学校は6倍、柔整師養成学校に至っては8倍に増加しました。
そうした経緯もあり、規制が撤廃され学校が増え始めた頃は一気に人気資格になりました。しかし、今や飽和状態を通り越し供給過剰で、新規参入の難しい業界になっています。当然、志願者の数も減少し、養成学校も淘汰される時代になり、廃校に追い込まれている施設もあると聞きます。学校は定員割れで、願書を出せば入学できるような状態です。はっきり言って粗製濫造です。
だから学校選びの一つの基準として、1998年以降の新設校ではなく、旧来からあった老舗学校を選択する方がベターかもしれません。もちろん新設校でもいい学校はたくさんあります。しかし、はずれに当たった時は途中で廃校になって他所の学校に転校させられたなんて話もあるからです。昨今はどの学校も見学説明会やオープンキャンパスなどをやっているので、そうした機会も利用して慎重に学校選びをすることをお勧めします。
そんな事情もあって、国家試験については年々ハードルが高くなっているようです。平成31年度の合格率は、はり師76.4%、きゅう師78.5%、あマ指師86.8%です。ただ学校でちゃんと勉強すれば十分に合格できるレベルだと思います。しかし、学校関係者に聞いた話では、入学試験がほとんど無いに等しい状態なので、勉強についてこれずに途中退学する人、3年行ったはいいけど卒業試験で落とされて国家試験を受験できないケースなどがあるようです。学校側も学力的に難しい人間を受験させると合格率が下がるのでそこはシビアなんですね。
それで受験できなかった、あるいは受験したが不合格だったとなるともう大変です。国試浪人です。また一年後の国家試験を目標に頑張れますか?モチベーションを保てますか?実際、浪人生の合格率はぐっと下がります。だから、現役生の合格率は先に示した数字よりもいいと思います。もし学校に入った暁には、絶対に現役で合格できるように頑張ってください。これからこの資格に臨もうという方は、そうした諸々の事情をよく理解して挑戦してください。
また国民の鍼灸治療の受療率が下がっているというデータもあります。はっきり言ってマイノリティな世界です。鍼灸院に来る患者は、あらゆる治療を試したけど「もうどうにもならない」それなら鍼灸でもやってみるかなんて人が多いんです。ファイナルアンサーです。藁をもすがるってやつですね。だから藁じゃダメなんです。一緒に沈んじゃうから。せめて浮き輪ぐらいにならないとね。ちゃんとそこで患者さんを救ってあげる腕が必要になります。それが出来てきたらこの仕事は超楽しいですよ😁 感謝されるお仕事ですよ!お金を稼ぐのだけが目的なら世の中にはもっといい資格や方法がたくさんあります。それよりも仕事にやりがいや生きがい、あるいはおもしろさを求めるなら鍼灸師の選択もありかと思います。
どちらかというと厳しい悲観的な内容が多くなってしまったかもしれませんが、私は最初にも書いた通り鍼灸師という仕事が気に入っています。こんなんでご飯が食べていけて幸せだな〜って思いながら毎日仕事をしています。後輩の人たちにも頑張って欲しいといつもエールを送るようにしています。ともにこの業界を盛り上げてくれる同志が増えればと願っています。だから、マイナス材料なんて吹き飛ばして、一旗上げてやるって頼もしい人入ってきてください。その時は僕でお役に立てることがあればなんでもしますよ!
私個人のお気に入りポイントは、
✅ 一人でできる。独立開業できる。
✅ マイペースでやれる。
✅ 人から感謝される。
✅ 仕事がおもしろい。
この辺ですかね。一個の意見なので、ご参考までに。
好きな仕事で生きていく
私は32歳の時に脱サラして専門学校へ入学し、35歳で卒業、浅野周先生(北京堂鍼灸)の下に弟子入りし、その年(2001年)の10月に開業しました。
私は競争が苦手で、組織の中で頭角を現し出世できるタイプではありません。そういう意味では、会社人間としてはあまり適性がなかったので、自分の生きていく場所が見つかった事が何よりも幸運に思います。食べるために好きでもない仕事や会社で消耗している事を考えると今は天国です。
一度社会に出て挫折してからの再スタートですが、むしろその経験はこの仕事においてはプラスです。
専門学校では高卒、大卒、ドロップアウト組の混成クラスで、いろんな世代や価値観の人間のミックスで、これはこれで面白い教室でした。
自然、ドロップアウト組は年長者でもあり、社会的先輩にもなるので、一目置かれます。これは臨床現場でも全く同じです。高卒、大卒の人たちは、卒業後が社会人一年生ですが、ドロップアウト組は、すでにアドバンテージがあります。社会的経験の有無は、それだけで価値があるのです。
好きな仕事でご飯が食べれるなんて最高ですよ。人生で仕事に従事している時間は、かなりの割合を占めます。そこで我慢して、自分を殺して生きていくより、やりたいことを探して、見つけて、生きていく方が絶対に楽しいです。
私もかつては満員電車の車窓に揺られながら、四角い空を見上げてため息ばかりついていました。こんな風に人生が過ぎていき、いつかはこれで良かったんだって思える日も来るのかな?って、そんなサラリーマン時代でした。
もし今の生き方に迷っているなら、そして、何かに挑戦してみたい気持ちがあるなら、あとはやるかやらないかです。
誰でも人生のうちで、そんなチャンスは何度か訪れます。そこで舵を切れるかどうかは、思い切りだけです。舵を切った人間から言うと、大概のことは「案ずるより産むが易し。」です。もしそれで失敗しても、その経験はあとで必ずあなたの人生の糧となります。失敗を恐れてなんにもしないのが悪です。なにかアクションを起こさない限り、転機は訪れません。
鍼灸師のサラリーマン化
私にとっては独立開業できるこの資格は魅力的でした。医療系の資格でも理学療法士や作業療法士は、病院勤務においては鍼灸師より待遇面では格上です。でも独立開業はできません。逆に鍼灸師は独立開業できますが、病院勤務での待遇は看護師より格下です。鍼灸治療は保険点数が稼げないからです。だから、私が学校に行っている頃は、独立開業が目指すべきゴールのような雰囲気がありました。
しかし最近の傾向は違うのかもしれません。少し前に厚労省が企画する外部臨床実習の指導者講習に参加しました。学習カリキュラムに変更があり、学生の外部での臨床実習が義務化されました。鍼灸師にはインターン制度がなかったので、その補填としての外部実習です。その受入先にと卒業校から依頼を受けたのです。
出席してみると自分より若い先生が大半で、なおかつ開業鍼灸師も思いの外少ないのに驚きました。目立ったのがチェーン展開している治療院で、そこから若い先生たち(女性3割くらい)が派遣され受講しにきているのです。彼らは派遣されるだけあって、職場リーダー的存在なのでしょう、皆いきいきしているんです。なんだか鍼灸師もサラリーマン化してるんだなぁ〜と少し寂しくも感じたし、逆にそういう受け皿がある事はいいことだなとも思いました。
それで彼らの実習受け入れの狙いはリクルートだというのです。学生が臨床実習に来た時に、いい人材がいれば確保しようというのです。
かつては徒弟制度が当たり前だった事を考えると、確実に時代は変化しています。
卒後の就職先があって、そこでしっかり経験をつんで、それから開業するか、勤務で行くのかを検討できる方がいいに決まってます。
治療家としての資質磨き
鍼灸治療に関しては「治す」という事にコミットメントした本当に面白い仕事です。例えば現代薬の処方を中心とする医師の仕事よりずっと手応えがあって面白いと思います。
患者の愁訴が改善するもしないも自分の腕次第だからです。施術については、常に向上心を持って真摯に取り組んでいけば、必ず上手くなります。この仕事について、初めて勉強の楽しさを知りました。勉強のための勉強ではつまらないですが、実利に基づいた勉強というのは「研究と工夫」です。治療の場では、常に研究して、実践して、成果を試せるんです。これは楽しいですよ。
でも患者を惹きつけるのは腕だけではありません。治療家の人間性です。いくら腕が良くても、患者から信頼を得られないようでは患者はついてきません。逆に腕がまだまだでも、あなたのキャラが魅力的であれば患者からは指示してもらえるかもしれません。だから、治療家は腕を磨くだけではなく、自分の人生も豊かにして、人間としての魅力、総合力をレベルアップしてください。そうするには、いろんなことに関心をもって興味をもって感受性を磨くことだと私は思います。
鍼灸院の立ち上げ
ホリエモンがすすめる起業スタイルとして、次の四つの条件を上げています。
①利益率が高い②在庫を極力持たない③毎月の定額収入が得られる④少ない資本で始められる
鍼灸師の仕事は、すべての条件を満たしています。①は鍼ともぐさが施術の材料費としてかかりますが、微々たるものです。ほとんどが利益です。②については物販ではないので在庫すらありません。③が一番ハードルが高いと言えます。要はリピーター、固定客ですね。ここさえクリアできれば経営は軌道に乗ります。④については以下で説明します。
鍼灸院の立ち上げは、医業の中ではもっとも初期費用が安くハードルが低いと思います。究極、往診専門にすれば、鍼ともぐさだけあればいいんです。実際、往診専門で成功している先生もいます。次は自宅開業。ベットと赤外線治療器と電気鍼用のパルス装置などがあればいいです。1セットなら20万も有れば揃います。鍼と灸(もぐさ)などもほとんど費用がかかりません。ただし、入りにくさがあって一般受けしないところが難点です。しかし、住居と仕事場を兼ねるので、上手にすると経費面では最も効率の良いやり方です。次は店舗開業。独りの治療院なら、ミニマム8坪(26.4㎡)程度でも開業できます。
私の場合、開業資金は300万用意しましたが、200万程度で済みました。内訳は、敷金50万、改装費100万(ただし、内装の残った居抜き物件、内装を全て自分でやるスケルトン物件ならもっと費用がかかります。)備品(ベッド3台、赤外線1台、オートクレーブ、鍼灸道具一式)です。
店舗は、14坪(46.2㎡)、家賃115500円(5年目に交渉 11万円⇒10年目に交渉 10万円⇒15年目に交渉 9万円)、最寄り駅より徒歩10分程度の物件ですが、商店街や銀行、病院等が集まる場所です。駅近物件が最適ですが、家賃が高いため、少し離れても集客が見込めるところで探しました。
開業時の器で、その後の治療スタイルも決まるので、ここは熟考すべきポイントです。
私は忙しい時は3台のベッドを回しますが、仮に4台あれば、それは4台回せる治療スタイルになっていたと思います。
逆に1台なら一人ずつしか捌けない治療スタイルになってしまいます。
スタッフを入れるかどうかもそうです。忙しくなってきたら人員を追加すればいいと考えがちですが、一人で始めれば、結局は一人で捌ける数しか来ません。
二人で始めれば、その器で捌ける数が来ます。だから、最初に器の大きさを決めてリスクを取るべきです。ちっちゃく始めたら、ちっちゃくまとまってしまいます。
ちなみに私は一人でこじんまりと開業しています。今のところ拡張する予定はありません。今のライフスタイルが気にいっているからです。独りの力で、ミニマムにどこまでやれるかが目下のテーマです。
自費治療がおすすめ
鍼灸治療は、健康保険の適応範囲が狭く(神経痛・リウマチ・五十肩・頚腕症候群・腰痛症・頚椎捻挫後遺症)、その上、保険点数も非常に低く、単価1500円程度です。しかも、利用するには医師の同意書が必要です。また同意書の発行については消極的な医師が多いのも事実です。
レセプト(保険請求する手続き書類)もたいへん煩雑です。私も過去、往療マッサージで健康保険を取り扱った経験がありますが、レセプトを書くだけで時間がとられストレスでした。
実際、鍼灸院では健康保険を積極的に取り扱っているところは少ないのが現状です。私のところも扱っていません。
医師の同意がいらない接骨院では、まだ保険治療が一般的ですが、すでに翳りが見えはじめ、今後は自費治療の割合が確実に増えていくことは、前にも書きました。
今後、少子高齢化が進み、医療財政の逼迫は避けられません。そんな中で、鍼灸治療が積極的に保険治療に組み込まれていくことはないでしょう。
最初から保険には依存せずに、自費治療と割り切ってやることを私ならおすすめします。
これからの開業鍼灸師
自費治療の施術料の設定は自由です。今の相場は4000円〜5000円くらいです。例えば1万円だっていいわけですが、高い設定にすると患者数が減ります。最初からこれでは経験が積めず、腕も上がりません。
そこで一人4000円として、どんぶり勘定をやってみましょうか。1日10人、週休2日で月稼働23日なら、4万円/日、92万円/月、1104万円/年。これは理想です。8人としても、3万2千円/日、73万6千円/月、883万/年、悪くない数字です。その半分4人で、1万6千円/日、36万8千円/月、442万円/年、これでも年収300万円と言われる中小企業のサラリーマンに比べたらどうですか?1日4人の患者があれば十分食べていけます。もちろん経費はかかります。主な経費は、家賃、光熱費、通信費、鍼灸道具代等です。
まずは開業して1日4人平均、そこから10人を目指して積み上げていけばいいのです。でもそんなに容易くはないですよ。
さてそこで駆け出しの頃ほど、隙間時間がたくさんあります。これからの時代は、副業を考えましょう。そういう展開が容易な時代になってきました。いわゆるノマドワーク的な仕事がおすすめです。やらない手はないと思います。何かアイデアが浮かべば、まずググってください。ブログでもYouTubeでもヒントや答えはそこら中に転がっています。全く畑違いのかけ離れた事ではなく、例えばこのブログもそうですが、自分の持っているスキルや経験と結び付けて展開すればいいのです。そうすれば例え副業の収益化がかなわくても無駄にはなりません。
人生100年時代に突入しています。未来のライフスタイルは予測不可能です。
少子高齢化による働き手の不足と言われる一方で、テクノロジーの進歩により、多くの仕事は自動化、無人化していくでしょう。
長寿による老後の延長は、定年を60歳→65歳→70歳→制限なしへと引き上げていくことも間違いありません。
鍼灸師の仕事は、機械やAIに取って代わられることは考えにくいし、定年もありません。これから予測される時代の変化にも比較的有利な資格だと思います。
しかも自由業的な副業も併せていくとおもしろいライフスタイルが構築できるのではないでしょうか。
まとめ
鍼灸師という仕事の周辺事情について書いてみました。時々患者さんでもチャレンジしてみたいという人がいて質問を受けることもあります。ここでの情報が、鍼灸師を志す人たちへ、少しは参考になれば幸いです。
私はこの仕事が大好きです。後進の人たちの育成、指導を通して業界に貢献できればと活動しています。ご縁があれば、いつかお会いできる日を楽しみにしています。
①鍼灸師向けの勉強会(ほのしん講座)を主宰。
②鍼灸専門学校の臨床実習施設として学生を指導。
③自院で研修生を受け入れ育成。