坐骨神経痛の鍼灸治療

執筆者 | 2021/06/07 | 坐骨神経痛, 患者向け

坐骨神経痛の積極的治療には鍼灸が一番です。

こんにちは。二天堂鍼灸院の中野です。

皆さん、坐骨神経痛とはどんな病気かご存知ですか?

お尻→太ももの裏側→膝裏→ふくらはぎ→すね→くるぶし→足裏→足先へ放散

坐骨神経痛の痛みは、持続性のことが多く、灼熱痛、刺すような痛み、鈍痛まで多様です。痛みの経路は、お尻→太ももの裏側→膝裏→ふくらはぎ→すね→くるぶし→足裏→足先へと放散します。このように疼痛が坐骨神経の走行に沿い放散することが特徴ですが、なかにはお尻、膝裏、ふくらはぎ、すねなどに限局する場合もあります。

30~50代にかけて多く、男性は女性より約3倍多いという統計もあります。通常筋力低下はありませんが、発作中は膝関節を少し屈曲し歩行すると楽です。これは膝を伸ばしたまま股関節を曲げると坐骨神経が引っぱられ痛むからです。〔Lasegue(ラゼーグ)徴候〕

坐骨神経の解剖学


坐骨神経は主に腰椎下部(L4、L5、S1~S3)より出る体内で最も大きな神経であり、下腿では腓骨神経と脛骨神経へと枝分かれします。この走行の中で、坐骨神経孔からの大腿後面への出口である梨状筋下孔と膝下部に顕著な圧痛点があり、ここを指圧すると疼痛が誘発されます。



上記の説明からもお分かりいただけますが、坐骨神経痛とは、症状名であり、病名ではありません。原因となる病気には、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症、腰椎すべり症、腰椎分離症、変形性腰椎症などがあります。他にも画像所見では異常がなく原因のはっきりしないものも少なくありません。

中でも、鍼治療が最も効果的なのは、筋肉に原因がある坐骨神経痛です。画像診断では腰椎の異常が特に認められない坐骨神経痛がそうです。この場合、骨を取り囲む筋肉に問題が生じています。原因となる筋は、腰部では大腰筋、臀部では梨状筋です。これらの筋中を、坐骨神経が通過するので、筋肉の柔軟性が低下し硬くなっていると、そこを通過する坐骨神経に機械的圧迫や牽引、締付けが起こります。専門的には、神経絞扼障害といいます。本来、健常な筋肉であれば、神経の機械的圧迫要因にはなりません。しかし異常に硬化した筋肉は、飛び出したヘルニアと同様、機械的刺激要因になりうるのです。筋肉が原因の坐骨神経痛には、以下の特徴があります。

①下肢の一部ではなく、下肢全体が痛む。
②夜間や明け方に痛みが強く、痛みで目が覚めることがある。
③横向きにからだを丸くして寝ると楽になる。
④長時間、座っていると、立ち上がりにくい。
⑤X線で腰椎の椎間狭小化を指摘されたが、CTやMRIでは異常がない。

器質的病気でもあきらめないで

それでは、画像所見で椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、腰椎すべり症、腰椎分離症、変形性腰椎症などの器質的病変が判明した病態には、鍼灸治療は効果がないのでしょうか?

そんなことはありません。画像診断で、ヘルニアが見つかっても、すべての症状が、そのヘルニアに起因しているとは限らないからです。これは、整形外科医も認めるところで、画像診断イコール確定診断ではないのです。なぜなら、ヘルニアが認められるのに、坐骨神経痛(他の下肢の神経痛も含め)が発症していない人はいくらでもいるからです。つまり、例えヘルニアで神経痛があっても、100パーセントそのヘルニアによって症状が発現しているとはいいきれないのです。

考えてみましょう。ヘルニアや脊柱管狭窄、すべり症、骨の変形といったものが、突然、発現するのでしょうか?

たしかに、突発性の事故、コンタクトスポーツ等での外力による傷害なら、考えられなくもありません。しかし、ほとんどのケースでは、加齢による退行性の病変や、仕事による疲労の蓄積が原因です。順番としては、筋肉の疲労が先にあり、その持続的ストレスにより、骨や椎間板が破綻したと考えるのが自然です。ならば器質的病変でも、筋肉を治療することで、症状が改善する余地は十分にあります。

器質的病変は、不可逆性の病態であり、最終的には、外科的手術に頼るしかありません。しかし、重度の運動麻痺や感覚障害、あるいは、膀胱直腸障害など生命に危険をおよぼすレベルでないかぎり、保存的治療法が行われます。病院では、物療室で電気治療に牽引、マッサージがほとんどです。帰りには痛み止めと湿布薬が処方されます。これらは、積極的な治療法とはいえません。また、湿布薬や鎮痛剤の連用はかえって治癒を遅らせます。

積極的治療は鍼灸で

鍼灸は、はるかに科学的で積極的な治療を提供できます。

当院の痛みの治療は、症状から該当する神経を割り出し、その神経が障害されているポイントにアプローチします。坐骨神経痛の場合、腰部の大腰筋と臀部の梨状筋がターゲットになります。これらの深部筋(インナーマッスル)を治療するには、3寸~4寸(9センチ~12センチ)の長さの鍼が必要です。しかし、一般的に鍼灸院で用いられる鍼は、1寸~2寸(3センチ~6センチ)程度です。これでは深部筋へのアプローチは不可能です。深い鍼に抵抗を感じる方もいますが、カラダの反応を確認しながら、穏やかに刺入しますので恐がる必要はありません。

大腰筋と梨状筋の神経点へ鍼を刺入し、下肢へ感覚が放散したところで鍼を留めます。ここが難しいポイントです。1ミリずれると、この後に行う、鍼通電療法において効果的な治療ができません。神経点にヒットした鍼に電極をつないで通電すると、座骨神経支配域の下肢の筋肉がピクピクと律動します。電極をつないだ局所の腰や臀部の筋肉が律動するようでは、筋肉パルスで神経痛には効果がありません。罹患神経に通電刺激をすることで、圧迫された神経の血流をよくしたり、興奮を鎮静する作用が期待できます。

この記事を書いた人

中野保
中野保

二天堂鍼灸院院長 / ほのしん講座代表

行岡鍼灸専門学校卒業後に北京堂鍼灸・浅野周先生に師事。2001年に独立し二天堂鍼灸院を開院。2007年に炎の鍼灸師・養成講座(現在のほのしん講座)を開校し、未来の鍼灸師の育成にも力を入れています。2018〜19年に 『医道の日本』誌に治療法連載。