ほのしん講座

難経・解読
兪穴篇

このページでは全六篇で構成される難経の兪穴篇(六十二難〜六十八難)の原文と翻訳を掲載しています。
翻訳・解説した人
中野 保
二天堂鍼灸院 院長
行岡鍼灸専門学校卒業後に北京堂鍼灸・浅野周先生に師事。2001年に独立し二天堂鍼灸院を開院。2007年に炎の鍼灸師・養成講座(現在のほのしん講座)を開校し、未来の鍼灸師の育成にも力を入れています。2018〜19年に 『医道の日本』誌に治療法連載。
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第六十二難

六十二難曰:臓井滎有五、腑独有六者、何謂也?

然。腑者陽也、三焦行於諸陽、故置一兪、名曰原。腑有六者。亦与三焦共一気也。

翻訳文

六十二難曰く:五臓の各経脈には、井・滎・輸(原)・経・合の五兪穴がありますが、六腑の方には、井・滎・輸・原・経・合、六兪穴あります、なぜですか?

それは~。六腑の経脈は、陽に属します。※三焦の気が各陽経に出入する所へ、一穴配置され、これが原穴となります。つまり六腑の各経脈には、原穴が単独に存在するため、六穴あるのです。また、原穴には三焦の気が巡り、すべてが一つの気の流れとなって通じています。

※原文では「三焦行於諸陽」とあります。これは上焦、中焦、下焦の陽気のことを指していて、手の少陽三焦経のことではありません。三焦は陽気の根であり、六腑は陽に属し、その元気を受けているという意味です。 しかしながら、六十六難において再度、原穴の考察が行われており、結局、三焦の気は十二経脈すべてに循環していると述べられています。つまり、六十二難において、六腑に原穴が単独に存在する理由は、三焦の気が循環しているためという答えでは、適当ではありません。 そこで『霊枢:順気一日分為四時』には、五輸穴を五時(春、夏、長夏、秋、冬)と組み合わせた場合、陽経は「原独不応五時、以経合之、以応其数(原穴が一つ増えたため六となり、五時に対応できなくなったので、経穴と併合して、五時の法則にかなうようにする)」とあります。つまり陽経には原穴が加わるため、五行や五時と噛み合わなくなるので、経穴と原穴をひとまとめにするということです。この限りでは陽経の原穴は経火穴に属し、ここから分かれたものだと推論することも可能です。陽経と陰経の付属経穴の数を比べても、陽経の方が圧倒的に多く、それだけ陽気盛んな経脈なのです。よって経穴の数も多く、原穴も単独にとったと考えられるのではないでしょうか。

第六十三難

六十三難曰:十変言、五臓六腑滎合、皆以井為始者何也?

然。井者東方春也、万物之始生。諸蚑行喘息、・飛蠕動。当生之物、莫不以春而生。故歳数始於春、日数始於甲。故以井為始也。

翻訳文

六十三難曰く:十変には「五臓六腑の各経脈には、滎や合等の輸穴があり、それらはすべて井穴より始まる」とありますが、どういう意味ですか?

それは~。井穴の五行属性は、方角では東、季節では春になります。万物はここから始まり、生長します。生物の活動が始まり、虫たちも飛び始めます。すべての生物は、春に誕生するのです。だから一年は春から始まり、日は甲から数え始めます。よって井穴は、経気の始まる場所なのです。

第六十四難

六十四難曰:十変又言、陰井木、陽井金。陰滎火、陽滎水。陰輸土、陽輸木。陰経金、陽経火。陰合水、陽合土。陰陽皆不同、其意何也?

然。是剛柔之事也。陰井乙木、陽井庚金。陽井庚、庚者乙之剛也。陰井乙、乙者庚之柔也。乙為木、故言陰井木也。庚為金、故言陽井金也。余皆倣此。

翻訳文

六十四難曰く:十変にはまた「陰経は、井木、滎火、輸土、経金、合水。陽経は井金、滎水、輸木、経火、合土。」とありますが、陰陽で五行の配当が違うのは、なぜですか?

それは~。陰と陽が、剛柔(相剋)のバランス関係にあることをいっているのです。例えば、陰経の井穴は乙木に属し、陽経の井穴は庚金に属します。陽経の井穴は庚金で、庚金は乙木を剋し、陰経の井穴は乙木で、乙木は庚金に剋されます。乙木は、陰経の井穴では木にあたり、庚金は、陽経の井穴では金にあたります。他すべては、これに倣って考えてみてください。

言い方が回りくどいだけで、つまり庚金と乙木は相剋関係にあるといっているのです。ここでは十干というカテゴリを使って相剋関係が説明されています。 ・十干(じっかん) 甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸の総称。これを五行に配し、おのおの陰陽をあてて甲(きのえ)・乙(きのと)・丙(ひのえ)・丁(ひのと)などと読ませる。普通、十干(じっかん)と十二支(じゅうにし)とは組合せて用いられ、干支(かんし)を「えと」と称するに至った。 〔三十三難参照〕

第六十五難

六十五難曰:経言、所出為井、所入為合、其法奈何?

然。所出為井、井者東方春也、万物之始生、故言所出為井也。所入為合、合者北方冬也、陽気入蔵、故言所入為合也。

翻訳文

六十五難曰く:内経には「出る所を井穴とし、入る所を合穴とする」とありますが、その法則の謂わんとするところは?

それは~。出る所を井穴とするのは、井穴の五行属性は、方角では東、季節では春にあたり、これは万物の発生を意味します。つまり井穴は経気の出る所なのです。入る所を合穴とするのは、合穴の五行属性は、方角では北、季節では冬にあたり、これは万物の陽気が収蔵されることを意味します。つまり合穴は経気の入る所なのです。

第六十六難

六十六難曰:経言、肺之原出於太淵、心之原出於太陵、肝之原出於太衝、脾之原出於太白、腎之原出於太谿、少陰之原出於兌骨(神門穴也)、胆之原出於丘墟、胃之原出於衝陽、三焦之原出於陽池、膀胱之原出於京骨、大腸之原出於合谷、小腸之原出於腕骨。十二経、皆以腧為原者、何也?

然。五臓腧者、三焦之所行、気之所留止也。

三焦所行之腧為原者、何也?

然。臍下腎間動気者、人之生命也、十二経之根本也、故名曰原。三焦者、原気之別使也、主通行三気、経歴於五臓六腑。原者、三焦之尊號也、故所止輒為原、五臓六腑之有病者、皆取其原也。

翻訳文

六十六難曰く:内経には「肺経の原穴は太淵、心包経の原穴は大陵、肝経の原穴は太衝、脾経の原穴は太白、腎経の原穴は太谿、心経の原穴は兌骨(神門)、胆経の原穴は丘墟、胃の原穴は衝陽、三焦の原穴は陽池、膀胱の原穴は京骨、大腸の原穴は合谷、小腸の原穴は腕骨。※以上十二経は、すべて腧穴を原穴とする」とありますが、どういう意味ですか?

それは~。五臓(六腑)の各経脈にある腧穴のことで、そこには三焦の気が巡り、留まります。

三焦の気が巡る腧穴を、原穴とするとは、どういう意味ですか?

それは~。臍下腎間の動気は、人の生命の根本、十二経脈の根本であり、これを原気といいます。三焦は原気の運び屋であり、上焦、中焦、下焦を流通し、五臓六腑に原気を行き渡らせています。つまり、原とは三焦の別称であり、ここに三焦の気が停止するのです。五臓六腑の病気には、すべてその原穴を取って治療します。

※原文には「十二経皆以腧為原」とあります。五臓の腧穴と、六腑の原穴を一緒にしたもので、いずれにも三焦の気が運行しており、五臓の腧穴だけを述べたものではありません。

第六十七難

六十七難曰:五臓募皆在陰、而兪在陽者、何謂也?

然。陰病行陽、陽病行陰、故令募在陰、兪在陽。

翻訳文

六十七難曰く:五臓の募穴は、すべて陰(胸腹部)にあり、背兪穴は、陽(腰背部)にあるのは、なぜですか?

それは~。陰の病邪は常に陽に向かい、陽の病邪は常に陰に向かいます。つまり、これらの病気を治療するにあたって、募穴は陰(胸腹部)にあり、背兪穴は陽(腰背部)にあるのです。

ここでは陰陽理論を用いて、臓腑の兪募穴は互いに表裏で、通じ合うことを述べています。生理的に経脈の気は、陰から陽に行き、陽から陰に行くことでバランスを維持しています。病理では陰病は陽に及び、陽病は陰に及びます。だから陰病では陽(腰背部)の背兪穴を使って、陽病では陰(胸腹部)の募穴を使って治療するのです。

第六十八難

六十八難曰:五臓六腑、各有井滎輸経合、皆何所主?

然。経言、所出為井、所流為滎、所注為輸、所行為経、所入為合。井主心下満、滎主身熱、輸主體重節痛、経主喘咳寒熱、合主逆気而泄。此五臓六腑、井滎兪経合所主病也。

翻訳文

六十八難曰く:五臓六腑には各々、井・滎・輸・経・合の五輸穴がありますが、これらの主治するところは何ですか?

それは~。内経には「※井は出る所、滎は流れる所、輸は注ぐ所、経は行く所、合は入る所とあり、また、※井は心下満を主治し、滎は身熱を主治し、輸は体重節痛を主治し、経は喘咳寒熱を主治し、合は逆気と泄を主治する」とあります。これらが五臓六腑の、井・滎・輸・経・合の主治する病気です。

※前段は井→滎→輸→経→合と、経気の流れを川に喩えて表現している。井は水源、経気の湧き出る所。滎はチョロチョロとした流れ、経気は微弱。輸は小川、経気はやや盛。経は本流、経気は盛。合は大海へ、経気は深入します。

※後段は五臓の五輸穴の主治について述べてあります。 井穴は木に属し、肝に対応します。心下部が張って苦しい(胸脇苦満)は、肝の症状です。井木穴を使って治療します。 滎穴は火に属し、心に対応します。身体発熱は、心の症状です。滎火穴を使って治療します。 輸穴は土に属し、脾に対応します。身体が重だるく、関節に疼痛を訴えるのは、脾の症状です。輸土穴を使って治療します。 経穴は金に属し、肺に対応します。喘息、咳嗽、悪寒、発熱は、肺の症状です。経金穴を使って治療します。 合穴は水に属し、腎に対応します。逆気(慢性で虚証の喘ぎや咳)と夜明けの下痢(鶏鳴下利)は、腎の症状です。合水穴を使って治療します。

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