ファシアってなんですか?

こんにちは二天堂鍼灸院の中野です。今回はファシアについて紹介します。
先日、NHK の『美と若さの新常識』という番組で「ファシア」を取り上げていました。そこでファシアを捉えた鮮明な映像を見ました。百聞は一見に如かず。ビッビッと臨床へのインスピレーションがいろいろ湧きました。これからは筋膜ではなくファシアという概念が浸透してくるかもしれません。

ファシアの驚き!!

これからの臨床はファシアに注目

ファシアってなに?

「ファシア」とは筋肉を取り巻く筋膜だけでなく、臓器や血管、骨、神経などを包む膜の総称です。どうやら私たちの身体のありとあらゆる隙間を埋めている構造体のようです。
かつては手術の時など目標臓器を露わにするため、ぞんざいに取り扱われていましたが、最近ではファシアの重要性が見直され、研究が進んできたようです。

実際、2018年頃から耳にするようになった新しいキーワードです。鍼灸の業界では『閃く経絡』(ダニエル・キーオン著/医道の日本社)という本が出版されファシアが話題になりました。「ファッシアがナゾを解く鍵だった!現代医学のミステリーに鍼灸のサイエンスが挑む!」と本の帯にあります。経絡とファシアを結び付けて発生学の観点からサイエンスしています。

さて百聞は一見に如かずです。血管を取り囲むファシアを鮮明な内視鏡映像で紹介していました。これは正直びっくり映像でした!!膜というよりも繭状?蜘蛛の巣状?綿あめ状?の伸び縮み自在の構造体でした。スパイダーマンが吹っ飛ばされた車や人間を助けるときに蜘蛛の巣状のネットを張って助けるでしょ。吹っ飛んできた物体はネットに受け止められ、受け止めたネットはびろーんと伸び縮みするでしょ。アレです。だから私たちの身体の中にはありとあらゆるところにスパイダーネットが張り巡らされてるんです。

この映像を見るまでは、筋膜とはコラーゲン質の白い膜のようなイメージだったのですが、全く新しいイメージに書き換えられました。コラーゲンに変わりはないようですが、水々しい透明なネットです。伸縮性は有に10倍は超えると思います。もし未来のロボティクス技術が発達し、人間と瓜二つのアンドロイドができたとしたなら、そこには必ずこのファシアのメカニカル化の技術が潜んでいるにちがいありません。そうでないと自然生命体のようなヌルヌルとした、滑らかな動きの再現は難しいのではないでしょうか。

滑走性の機能美は健全なファシアから

番組では、理想的な美ボディのAさんと、肩こり・猫背のBさんの僧帽筋と菱形筋の動きをエコー画像で紹介していました。左右の肩甲骨の間のエリアです。僧帽筋と菱形筋どちらも肩甲骨の動きに関わる筋肉ですが、アウターマッスルの僧帽筋の下にインナーマッスルの菱形筋があり、それぞれ違う動きを担当しています。Aさんの場合は僧帽筋は菱形筋の上を滑走し、二つの筋肉が別々に動いているのがよく分かります。Bさんの場合は僧帽筋の動きに引っ張られる形で菱形筋も一緒になって動いていてファシアが正常に機能していないのが分かりました。
そこで理学療法士の先生が筋膜リリースの手技を披露していました。僧帽筋引っぺがすテクニックで、つまんでつまんでって感じです。患者さんは相当痛そうです。
さらに自分でもできる「ファシアゆるゆる体操」も紹介されていました。肘を曲げた状態で、肩関節を出来る限り大きくゆっくり回す運動です。超簡単ですが効きます。肩こりさんのセルフケアには大変いいと思いました。

私も肩こり、腰痛などの筋疲労性の運動器疾患には、鍼治療+徒手療法を用いて治療に当たっています。徒手療法についてはあん摩の拇指揉捏と指圧の拇指圧迫がテクニックがベースです。日々研究をかさねながら、現在は揉むのでもないし、押すのでもないというのが有効な手技につながると私は考えていました。でも外からは、揉んでいるし、押しているようにしか見えないかもしれません。しかし実際は筋肉のスジをできるだけ細かく捉えて、捉えたスジを動かすという感じです。言うなれば超局所的な筋肉運動、筋肉体操、筋肉ストレッチをやっているイメージです。
今回のファシアの映像を見て、自分のやっている手技と見事に重なりました。ガッテン!ガッテン!自分のしているのはファシアリリース・マッサージでした!

まとめ

鍼治療と徒手療法の組み合わせは、静と動の治療の組み合わせだと私は考えています。
静的治療の鍼は、徒手では不可能な深層筋(インナーマッスル)へのアプローチができます。また生体に最小限のダメージを与え、治癒作用だけを引き出せる優れた効果も期待できます。(ちなみに徒手で深層筋へアプローチすると強圧をかけるため筋繊維を傷めます。)
動的治療のマッサージ(徒手療法)は、アウターの筋肉を広くカバーできる上に、動きのある治療ができます。ファシアの癒着が重層している筋肉の滑走を妨げているなら、徒手で動かす、剥がすといったアプローチが大変有効です。

2つの治療を組み合わせることで、互いの長所と短所を補い合い効果的な治療を提供できるものと私は考えています。

この記事を書いた人

神戸市の鍼灸院・二天堂鍼灸院鍼灸師養成講座・ほんしん講座

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